目白からの便り

Cooperative Career 持たざる者の生き残り戦略 キャリアの共同利用の戦略的価値 その3/3

副題:独占しないことが、独占をもたらす

組織は個々人がもつキャリアを固定的に独占的に所有することの呪縛から解き放たれ、もう少し柔軟に活用していくことに向き合った方がいいと思う。人材の調達方法に関しても、4月の一括での採用でなく、またその応用動作である秋採用などという時期的に固定化したものでなく、通年採用ができる社内システムを構築することに挑み続ける姿勢が不可欠だと思う。

企業が個々人のキャリアを独占し、社会資本として活用したがらない理由は構造的にどのようなメカニズムに起因しているのかと考えることがある。人事制度はあくまで手段であって、その大前提としての経営戦略を実現する為のあるのだとすると、人事システムの変更は、人事部門が行うことではなく、まさしく経営が主体性を発揮して行うべき領域であるともいえる。事業領域を自社の内部資源を詳しく分析することによって競争軸を描き、どの事業領域で戦い、誰と競合するのかということを描き切り、顧客への価値提供の代替不可能な希少性をどのように創造するかについて考え人事戦略を策定することが大切である。

そして、経営者も人事担当者も労働関連法制や慣行によって、どうしようもなく硬直化した日本独自の人事雇用環境の呪縛に思考停止することなく、組織マネジメントの領域おいてもチャレンジし、かつて日本のお家芸であったような現実を凌駕する技術革新のようなイノベーションの大胆さが求められるのだと思う。

Cooperative Career キャリアの共同所有と共同活用という概念は、日本の人事管理における他国が真似できない破壊的なイノベーションになる可能性が戦後の社会資本形成のプロセスになかに組み込まれてきたのではないかという私自身の実務者としての体験感覚があるからである。欧米的な株主資本主義という資本主義経済の根幹的なロジックが経営者にも働き手にもどうもしっくりこず、肌感覚として馴染めず、法人資本主義的な、また人本主義的(伊丹,1987)な思想が労使双方に好んで受け入れられている。

キャリアの共同所有と活用の人的資源管理の環境インフラは、そのひとつの有効な処方箋のアイデアになりうる可能性を有していると思う。経済的、社会的な閉塞感が続き、将来の成長余力に懐疑的になっている中、これから数年、労使双方で日本ならではのお家芸となる経営メカニズムを再構築する絶好の次機会でもありそうだ。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2023年12月15日  竹内上人

【文中参考文献】
中小企業の共同事業の成功要因:組織・契約構造の影響に関する分析 岡室博之 (商工金融,2003.1)
リ・イノベーション視点転換の経営 米山茂美(日本経済新聞社 2020)
中小企業における戦略的連携の創造的方法 内本博行 (流通經濟大學論集, 2016 Vol51. No.3)
人本主義企業 : 変わる経営変わらぬ原理 伊丹敬之 (筑摩書房 1987)

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